2026年度の
プロジェクト採択実績
甲田PJ
- プロジェクト代表者名
- 甲田 優太
- 所属
- 数理物質系 助教
- 課題名
- 創薬事業展開を目指した生体内で機能する高強度インジェクタブルゲルの開発
プロジェクトの概要
本プロジェクトでは、代表者が開発してきた高分子ミセルを基盤としたアミノ酸徐放型ナノ粒子を利用した高強度インジェクタブルゲルの事業展開を目指すための基盤確立を図る。 代表者は、生体適合性が認められたポリエチレングリコール(PEG)にポリアミノ酸(PAA)を共有結合で連結したジブロック共重合体(PEG-b-PAA)やトリブロック共重合体(PLys-b-PEG-b-PLys)を合成してきた。PAAセグメントが例えば疎水化ポリシステイン(PCysR; R, 疎水基)の場合、酵素により分解されてシステインが徐放される。その結果、副作用濃度以下でシステイン濃度が長時間維持されるため、低分子では効果が得られない低い投与量でも、抗酸化作用が著しく向上し、担がん、肺がん転移、敗血症、代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)、急性肝障害、潰瘍性大腸炎モデルマウスで低分子システインと比較して有意な重症化抑制効果を示した。一方、PEGの両末端にポリリジンを直接連結したトリブロック共重合体(PLys-b-PEG-b-PLys)は、ポリスチレンスルホン酸とポリイオンコンプレックス(PIC)を形成することでフラワーミセル型のナノ粒子を形成する。このナノ粒子は、シリカナノ粒子とも複合化可能であり、温度とイオン強度が増大すると不可逆的にゲル化し、従来よりも弾性率の高いインジェクタブルゲルとして機能し得ることを見出した。 本事業では、代表者の上記基盤技術を事業展開するために、がん転移抑制効果を高めるインジェクタブルゲルの開発を進めていく。
森川PJ
- プロジェクト代表者名
- 森川 翔平
- 所属
- 医学医療系 講師
- 課題名
- 眼への光照射技術による眼科手術照明の課題解決とグローバル展開 そして眼底診断装置への展開
プロジェクトの概要
本技術は、従来最も合理的とされてきた「眼球に孔を開けて眼内に照明器具を挿入する」侵襲的照明を不要とし、非侵襲的な眼内照明による眼科手術を実現することを目的とする。光源位置および光路設計を最適化することで、脈絡膜・強膜に守られた眼球内部を眼外から十分に照明可能なデバイスを開発した。これにより、患者の身体的・心理的負担や感染リスクを低減しつつ良好な予後を実現するとともに、医療従事者にとっても低リスクかつ習得しやすい手術環境を提供し、教育コストの削減にも寄与する。 事業としては、まず網膜剥離手術の代表的術式である「強膜内陥術」向け眼内照明装置の早期上市を目指し、その後、網膜剥離や各種硝子体疾患に対して行われる「硝子体手術」への適用拡大、さらには眼底検診への応用を段階的に進める。眼底検診への応用については、病院検査、健診スクリーニング、スマホを用いたセルフスクリーニング等を含む、数千億円規模の眼底検診市場への展開が期待される。 将来的なグローバル展開を見据え、関連する基本特許3件を筑波大学名義でPCT出願済であり、国際的な知財基盤の強化を進めている。
上野PJ
- プロジェクト代表者名
- 上野 勇太
- 所属
- 医学医療系 講師
- 課題名
- 世界の眼科医療格差を解消するための角膜AI診断支援システム事業化に向けた医療ベンチャー設立
プロジェクトの概要
筑波大学眼科および学会(日本角膜学会、日本眼科AI学会)が中心となって開発した角膜・前眼部疾患AI診断支援システムの海外展開事業化を目指す。システムは深層学習技術を基盤とし、前眼部カラー写真から9疾患カテゴリーの分類および感染性角膜炎の4病原体特定を数秒で行うプログラム医療機器であり、従来の細隙灯顕微鏡写真に対する自動分類精度やAI支援下での医師の診断精度向上効果は論文で実証済みである。スマートフォン撮影画像にも対応しており、導入コストは従来の細隙灯顕微鏡の1/10以下で、携帯性に優れているため医療過疎地域での実装も可能である。本ベンチャーは、国家として眼科医が不足する低・中所得国(東南アジア・南アジア・中南米・アフリカ)や、先進国においても僻地医療をターゲットとした海外展開を主軸とし、施設ライセンス型・診断回数課金型などを組み合わせた収益モデルを想定する。ドイツ・ケルン大学眼科をはじめとした海外医療機関との共同研究を通じて多人種対応の開発も進め、「眼科医のいない場所に眼科医の目を届ける」ことで世界の角膜疾患による失明を減らすことを目指す。
佐々木PJ
- プロジェクト代表者名
- 佐々木 銀河
- 所属
- 人間系 准教授
- 課題名
- 精神科・心療内科の患者が抱える困りごとの言語化補助と対処法提案を行うチャットボットの事業化
プロジェクトの概要
本学の研究成果物である、発達障害支援チャットボット「ダボット」(整理番号25-C10)とルールベースチャットボット対話シナリオ自動生成アルゴリズム(特許7764081)を、医療機関に販売・展開を目指すものである。具体的には、①予約時間を患者が失念し来院しない機会・経済的損失、②患者が医師に日常の困難を伝達できなかったり診察に必要な情報を伝えられないこと、③医師が発達障害当事者へ生活・ケースワーク的な支援情報を提供できないこと、の3点を解決するために、当該研究成果物に予約診察日の数日前にダボットがリマインドをし、診察時に医師に伝える項目を整理できる機能を付加価値として実装する。実装する機能で医療機関は患者の状況を把握しやすくなり、患者は医師とコミュニケーションを取れると実感することに加え、既にあるダボットが提供するケースワーク的な情報を患者が得られることで、医療から福祉的な支援への接続も期待でき、診察の質向上、効率化、患者の満足度向上が期待される。本助成期間では、特に医療機関の課題と解決策の仮説検証並びに、本サービスの価格検証を行う。
松坂PJ
- プロジェクト代表者名
- 松坂 賢
- 所属
- 医学医療系 教授
- 課題名
- 遺伝性疾患の根本的治療を実現する日本発次世代ゲノム編集技術の開発と実用化
プロジェクトの概要
世界における遺伝性疾患の潜在患者数は約3億5,000万人と推定されているが、その95%以上において有効な治療法が確立されておらず、医療上の喫緊の未解決課題となっている。近年、CRISPR/Cas9をはじめとするゲノム編集技術による遺伝子変異の直接修復が期待されているものの、配列制約、オフターゲット作用、安全性、免疫原性、および高製造コストといった課題から、その臨床応用は極めて限定的である。これに対し本プロジェクトでは、全く新しい分子メカニズムに基づき、「配列制約のない編集」「高い特異性(低オフターゲット)」「再投与の可能性」「低コスト化」を同時に実現する次世代ゲノム編集技術を確立する。これにより、従来技術では治療困難であった遺伝子変異に対する新たな治療基盤を構築し、将来的な社会実装を目指す。
青木PJ
- プロジェクト代表者名
- 青木 真希子
- 所属
- 医学医療系 准教授
- 課題名
- 月経周期に伴う心身変調の発症前予測・介入支援・改善可視化プロダクトの事業化検証
プロジェクトの概要
本テーマは、月経周期に伴う心身の変調を「症状が出てから対処する」ものではなく、発症前に予測し、適切な介入につなげ、改善を可視化する支援プロダクトとして社会実装するための事業化検証である。申請者はこれまで、月経前症状を有する女性において、症状が強く現れる黄体期だけでなく、比較的症状が自覚されにくい卵胞期にも、気分状態、自律神経活動、前頭前野活動などに特徴が現れる可能性を検討してきた。本事業では、既存データと追加PoCを用いて、短時間計測に基づく状態推定、介入候補の提示、介入前後の変化を可視化するプロトタイプを構築する。具体的には、企業・大学・医療職等へのヒアリングにより利用場面と課題を明確化し、研究成果をもとにした予測ロジックとユーザー画面案を作成する。最終的には、働く女性や学生が自身の状態を客観的に把握し、無理なくパフォーマンスを維持できる支援サービスの基盤を構築する。